食品事業と外食事業の両輪で「食のライフスタイルカンパニー」を掲げる株式会社イートアンドホールディングス。同社は「大阪王将」をはじめとした外食ブランドと、冷凍食品・常温商品の製造販売を展開する上場企業だ。グループ6社・約470店舗体制へと拡大し、ホールディングスとして多様なブランド・ビジネスモデルを束ねている。
こうしたホールディングス経営と多店舗展開の裏側で、グループ各社の経費精算・請求書チェックなどの経理業務は、すべてホールディングス経理財務部に集中していた。
人手不足や業務過多、会社ごとの異なるルール・慣習が入り混じることにより様々な課題が顕在化していたという。
本来であれば、こうした経理の課題は経理財務部門自身が主語となって語られやすい。しかし同社では、経理アウトソーシングの旗振り役を担ったのは経理部門ではなかった。「社員のエンゲージメント向上」をミッションとする経営管理本部 エンゲージメント戦略部と呼ばれる、いわば“人と組織”の責任者が改革の先頭に立ち、「経理代行」というソリューションに辿り着いたのである。
出発点も、一般的な経理起点の課題ではなく、「このままでは現場の負荷が大きくなるばかり」「将来のERP導入や業務改革もいつできるか分からない」という、人事・経営企画に近い問いから議論がスタートした点が、本インタビューの大きな特徴だ。
経理財務の現場に直接所属していないからこそ、「どこまで外に出せるのか」という線引きをフラットに見直すことができたイートアンドホールディングス。彼らはどのようにして経理アウトソーシングという打ち手に辿り着き、業務改革を両立させていったのか。
今回は、グループ6社を束ねる同社が、経理アウトソーシングサービス「バーチャル経理アシスタント」を提供するメリービズ株式会社(以下、メリービズ)とともに取り組んだプロジェクトの背景と成果について、経営管理本部 エンゲージメント戦略部 ゼネラルマネージャーの長谷川氏に詳しく話を伺った。

当社は食品事業と外食事業を両方展開する食のライフスタイルカンパニーで、代表的なブランドは「大阪王将」です。グループ会社も含め、国内外で飲食店の運営と食品製造・販売の両輪でビジネスを行っています。
私が所属する経営管理本部 エンゲージメント戦略部は、その名の通り「社員のエンゲージメントを高める」ことをミッションとした部署です。社員が会社に愛着を持ち、「ここで長く働きたい」と思える状態をつくることがゴールです。
具体的には、各種研修の企画運営や全社イベント、定例朝礼や全社フォーラムのコンテンツ設計などを担っています。いわば「社内向けのカスタマーサポート」のような役割で、経営と現場の間に立って、働きやすい組織づくりを進めています。
やはり人手不足と業務の属人化、そして業務過多ですね。ホールディングス化しているとはいえ、グループ6社の経費精算や請求書チェックを含め、経理財務の仕事はすべてホールディングスの経理財務部に一極集中しています。
各店舗や各社からの申請が月に数千件単位で一か所に集まってくるので、特に月末月初には業務が大きく偏り、残業がかさみやすい構造でした。加えて、会社ごとに過去からのやり方やルールが異なるため、どうしても業務が属人化し、セクショナリズムが生まれやすい環境になっていたと感じます。
また、同時期にERP導入のプロジェクトが始まったんです。それに伴い経理メンバーの工数を相当数割く必要が出てきて、このままでは健全に業務を進めるのは難しいと思っていました。

そうですね。現場の人たちに、経理ルールを伝えて徹底してもらうのは、どこの企業も共通の悩みだと思います。
その意味で今回の経理アウトソーシングのプロジェクトも、「経理だけが分かっていればよい仕組み」にすると破綻すると感じていました。現場メンバーにとって大事なのは、細かな経理ロジックではなく、「いつ・何を・どうすればいいか」のルールと手続き内容がシンプルに伝わることです。紙やメールでマニュアルを配るだけではなく、日々多忙な店舗を運営していく中でいかに無理なく新しいルールを組み込めるかがポイントでした。
分からないことを経理側へ問い合わせるための窓口を設置しましたが最初の数カ月は質問の嵐で、経理財務部と一緒に悪戦苦闘しましたが、半年ほど経つと質問もほとんど出なくなりました。
先ほども申し上げましたが、人が安定しない状態の中でのERP導入プロジェクトが立ち上がったときが大きなきっかけで、経理メンバーに既存業務を抱えたままERP対応までお願いするのは、「業務量的にかなり大変になるのでは?」と強く感じました。足元の業務負荷が下がらない限り、新しいチャレンジに時間を割くことはできません。そこで。「足元の稼働を浮かせるためには、足元の仕事を外に出すしかない。その手段としてアウトソーシングしかない」と経営陣に提案しました。
もちろん選択肢としてはありますが、私は最初から「アウトソーシング一択」でした。派遣社員さんに入っていただいても、その方が辞めてしまえばまたイチから教育し直しですし、正社員であっても、ノウハウの蓄積と退職リスクは常に隣り合わせです。
一方で、経費精算のチェックなど「ノウハウは必要だが、正社員が担わずとも進められる仕事」は確実に存在します。そういった業務を社内に抱え続けるのは、生産性の観点からも、エンゲージメントの観点からも合理的ではありません。
アウトソーシングであれば、たとえアウトソーシング先の担当者が入れ替わっても、私たちに教育や引き継ぎのコストは発生しないですし、業務品質や対応水準へのリクエストも社内よりドライに進められます。属人化と人材定着の両方の課題を同時に解決するには、アウトソーシングが最適解だと考えました。
大企業や多拠点の事例が多く、スポット対応も柔軟にできて、かつ専任の管理者がつく、そんなイメージが合致したのがメリービスさんだったんです。費用感も想定より高くなく、「これなら人件費や採用・教育コストと比較しても十分見合う」と判断しました。
導入にあたって印象的だったのは、ヒアリングの丁寧さです。経理の具体的な業務内容も他社のやり方も、私は正直あまり詳しくありませんでしたが、「あるべき姿に近づくにはどこをどう変えるべきか」「どこまで巻き取れば楽になるか」を一緒に考えてくれました。
業務全体を俯瞰し、「ここまでなら外に出せます」「ここは社内で持つべきです」と線引きをしてくれたのは、とても心強かったですね。自分たちだけだと、どうしても「井の中の蛙」になってしまいますが、他社事例やベストプラクティスを教えてもらえることで、視野が広がりました。
やはりセキュリティや原本管理の部分については、経営層や監査側からも多く質問がありました。データと証憑をどう扱うのか、物理的な受け渡し方法をどうするのかなど、一つひとつ丁寧に回答を重ね、解決していきました。
また、ホールディングス内の各グループ会社にとっては、「申請の手間が増えるのではないか」「面倒な業務が現場に返ってくるのではないか」という懸念もありました。そこに対しては、各社ごとに個別説明の場を設け、「むしろ全社的なルールが明確になり、内部統制も強化される」というメリットを具体的な事例を交えて説明しました。
結果的に、経理財務部の属人化を解消し負担を軽減できただけでなく、上場企業としての内部統制水準を一段引き上げることにもつながったと感じています。
導入当初は、経理メンバーもアウトソーシングに慣れておらず、メリービズさんが「ここも巻き取れますよ」と提案してくれても、「いえ、ここは大丈夫です」と遠慮してしまうことがありました。
しかしメンバーとともに話し合って「確かに任せた方が楽になるかもね」という結論に至るということを何度か続けた結果、徐々に我々も「アウトソーシングというサービスの意味」を理解していったように感じます。今では、「ここもメリービズさんにお願いした方がいいよね」「ここに人件費をかけるより、アウトソーシングに投資した方が合理的だよね」という会話も増えてきました。

定量的なところで言えば、月次決算のタイミングでも、以前のような極端な残業はほとんどなくなったと聞いています。
定性的な面では、「他社はこうしているらしい」という情報が入ることで、経理メンバーの思考が広がっているのが印象的です。他社のやり方を知ることで、「うちもこうした方がいいよね」「この仕組みは変えた方がいいよね」と、自ら業務改善を考えるきっかけになっています。
個人的に大きいと感じているのは、アウトソーシングした業務がそのままデータベース化されていることです。これまでは送ってしまえば経理財務部しか分からなかった支出も、今では「昨年いくらかかったか」「この取引先への支払いがどれくらいか」を誰でも検索して確認できます。人の入れ替わりに左右されないかたちでデータが蓄積されることで、属人化の解消にもつながっています。
そうですね。さらに、データが見える化されたことで、経営陣とのコミュニケーションも変わってきました。感覚的な議論ではなく、「この年度はここにこれだけコストがかかっている」「この数ヶ月でこの費目が増えている」といった具体的な数字をベースに会話ができるようになり、打ち手の検討もしやすくなっています。
また、ERP導入のような中長期のプロジェクトにおいても、足元の業務が安定していることで、経理メンバーがプロジェクトに安心してコミットできる環境が整いました。短期的な業務に振り回されるのではなく、将来の業務基盤を整備する時間を確保できるようになったことも、アウトソーシングの大きな効果だと感じています。
まだ道半ばではありますが、「ひたすら業務処理をする部門」から徐々に変化しつつあると感じています。
これまでは、月末月初の膨大な処理に追われるあまり、「どの会社にどれくらいコストがかかっているのか」「どの店舗のどの費目が増えているのか」といった分析に十分な時間を割けていませんでした。アウトソーシングによって足元の業務に余白が生まれたことで、少しずつ「数字を読む」「傾向を見る」といった、本来経理財務が担うべき役割に目を向けられるようになっています。
また、ホールディングスとして各社にルールを浸透させるうえでも、「メリービズという第三者」が入っていることで話が進めやすくなった側面もあります。グループ共通のルールやフローを定義し、それを前提にアウトソーシングの設計をする――そのプロセス自体が、シェアード機能としての土台づくりになっていると感じます。
今後は、今回の経費精算・請求書チェック以外の領域にも、同じ発想を広げていける余地があるはずです。たとえば、今はまだ社内に残している業務の中にも、「仕組み化さえできれば外に出せる仕事」はたくさんあります。どこまでを内製し、どこからをアウトソースするのかという線引きを見直し続けることが、ホールディングス経理の重要なテーマになっていくでしょう。
エンゲージメント戦略部としては、「長く働きたいと思える会社」を創ることが変わらないテーマです。そのためには、ワークライフバランスを保ちつつ、生産性を上げ、利益率を上げて給与に還元していく必要があります。
経理アウトソーシングは、その一部を担う施策だと考えています。社員が担うべきではない仕事を外に出し、社員は付加価値の高い仕事に集中できるようにする。
どんな会社にも、正社員がやるべきではない仕事がたくさん眠っていると思います。そういった業務が大量にあると、優秀な人から辞めてしまう。属人化や人の定着に悩んでいる企業には、ぜひアウトソーシングをおすすめしたいですね。
メリービズさんに対しては、少し変な言い方かもしれませんが、「どんどん業務を奪い取ってほしい」と思っています。お金を自宅に置かず銀行に預けるのと同じで、「預けた方が安心」「預けた方が合理的」という領域はもっともっとあるはずです。
当社の取り組みが、同じようにホールディングス化や多店舗展開を進める企業の皆さまにとって、経理アウトソーシングを検討する一つのきっかけになれば嬉しいですね。今後もメリービズとともに、より強い経理体制づくりに挑戦していきたいと思います。

インタビューに応じていただきありがとうございました!